「シニア百山」の刊行にあたって
                                深田クラブ 会長 鴨下 重彦 

  よく登りよく書くわが深田クラブが創立三十五年を迎えた記念事業として取り 組んだ「シニア百山」が、ここに刊行される運びとなった。数年前の役員会での 衆議一決は早かったが、選定委員会を発足させ会員から候補の山々を募り、慎重、 入念な検討を重ねて百山を選び、分担執筆された原稿を編集して刊行に到るまで には、相当時間と労力もかかり、大変な作業であったと思う。
  高齢者が登るのに相応しい山となると、山名、標高、山の魅力などに加えアプ ローチの難易、安全性なども大きな問題になる。日本百名山や日本二百名山の選 定よりも難しかったのではなかろうか。
  目次をみると、シニア百山は、北は北海道から南は九州まで全国的に広く分布 している。標高については1,000m前後のものが過半数を占めるが、2,000mを超える山も二山ある。比較的よく名前の知られた山もあるが、無名の山が多く、ある 意味で地方の隠れた名山の発掘、紹介になるかも知れない。執筆者により濃淡は あるが、それぞれに思い入れがあり個性の滲む文章となって、単なる散文的な ガイドブックとは一味違う。
  今後高齢者がシニア百山に挑戦してますます元気になることを願うと同時に、 本書が高齢者に限らず、多くの人に知られて楽しい山登りの機会を提供してくれ ることも期待する。

*故鴨下重彦会長
     1934年生まれ。東大医学部長、国立国際医療センター総長を歴任するなど多忙を
    極める要職の傍ら、日本三百名山完登など全国各地の山々を登り歩く。2010年4月、
    深田クラブ会長に就任し同年秋には日本百名山2周目を乗鞍岳で祝う。闘病しながら
    登山活動を続けるも2011年11月10日死去。