枯死した世界最南端のハイマツ(2007年9月1日)
             
 (掲載日 2007年12月9日)
  
枯死した世界最南端のハイマツ                  南アルプス南部     
 
 深田久弥著『日本百名山』の光岳の項には、いわゆる世界最南端のハイマツが紹介されている。深田は岳友の植物学者田辺和雄らとともに昭和11年8月、易老渡から光岳に登り、途中雨に悩まされながらも山頂に達した。山頂から少し先の御料局三角点の傍のハイマツの根元に腰を下ろし、パイナップルの缶を開けて食べた、との記載がある。

 そのハイマツは武田久吉により、世界最南端のハイマツと折り紙をつけられ、その時田辺和雄の撮った写真は武田・田辺・竹中著『日本高山植物図鑑』のページを飾った。
 本年(2007)9月1日、光岳に登ったが、この世界最南端のハイマツが枯死し、白骨のようになっていた(写真)。15年前に上った時にはまだ健全だったのに大変残念であった。おそらく成育条件がよくないのであろう。あるいは地球温暖化の影響であろうか。周囲を注意して見渡しながら、少し南の光岩まで往復したが ハイマツは一本もなかった。

 なお、南の池口岳の標高2156メートル標高点の先の岩場難所には10株程のハイマツがあって、秋には光岳から雷鳥が飛来すると、新ハイキング社『日本300名山ガイド 西日本編』に廣澤和嘉氏の記載があり、そのハイマツの存在は10年前池口岳に登ったとき確認している。また今回光小屋近くで2羽の雷鳥を目撃した。(鴨下重彦記)