エンガディンの風に吹かれて

   
(スイス東部)

          掲載日: 2005年8月7日

ロゼックの谷にて

コルヴァッチュ展望台
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 2004年7月9日。早朝の天候は芳しくなかったが、コルヴァッチュ・ケーブルカーで中間地点のムルテル駅(標高2,709m)へ上ると、山肌は真っ白、駅の温度計は−3℃。更に乗り継ぐと、終点のコルヴァッチュ展望台(3,303m)はスキー場のような積雪で寒かった。

 しかしながら、ここからの山岳展望は圧巻である。真南に真っ白なコルヴァッチュ山(3,451m)が聳える。その稜線を2人の登山者がアンザイレンして登っていた。残念ながら、その南東奥のベルニナ山群の盟主ピッツ・ベルニナ(4,049m)は雲の中だった。

 雪が多いので、ムルテル駅からロゼックの谷へ下る道の様子を売店で尋ねたら、「昨夜の雪で今日下る人は少ないが、危ない所はない。今年は17年振りに雪が多い。」とのこと。ムルテル駅で再び難易度を確認したら、返事は「Easy」。「山に慣れない家内も一緒だが、大丈夫か?」と尋ねたら、「No, Problem」だった。

 いざ下り始めると、よく整備された道は広く、案ずるような山道ではなかったので安心した。峠にあるスールレーユ小屋(2755m)まで35分。夏シーズンには少し早いので、小屋のレストランはまだ開いていなかった。

 ここで、いままで見えなかったベルニナ3山の雄姿が眼前に現れる。チエルヴァ氷河の奥に、右からピッツ・ロゼック、ピッツ・ベルニナ、ピッツ・モルテラッチュと屏風のよう屹立する景観は凄い。これを見ただけで、今日の元はとった気にになつた。ただ、ピッツ・ベルニナの頂は相変わらず雲の中。

 小屋を過ぎると草地が多くなり、山稜の東斜面をロゼックの谷へ下る。次第に気温も上がって濃い緑の中に黄、ピンク、水色の草花が目に付く。心地よい風に吹かれなから、ベルニナ山群を始終眺められることが殊に嬉しかった。
 途中で日本人ハイキングツアーの団体を追い越し、峠の小屋から約2時間でホテル・ロゼック・グレッチャーに着いた。ここのレストランで遅い昼食をとる。

 ここからポントレジーナ村まで6km。一般車は乗入禁止だが、馬車の便がある。我々は花の多いロゼックの谷を歩いた。途中で後から熟年夫妻に「東京から?」と英語で声をかけられる。吉祥寺に知人がいるシュットガルト在住のドイツ人だった。主人は数年前60歳の記念にピッツ・ベルニナに登ったらしい。 

 一緒に歩いたが、大柄な彼等の歩調は早い。1時間半程で、谷の入り口にある投宿のポントレジーナ村が見えてきた。幸い天候にも恵まれ、満足度の高いスイス・ハイキングであった。 (作成者 吉田博至)  
    
     ※ 関連記事 山旅の思い出02. セガンティーニ美術館(スイス)            
             

コルヴァッチュ山

ムルテル駅から

スールレーユ小屋

ベルニナ3山

先に見える村は
ポントレジーナ