(図書紹介)  高澤光雄著
     
      山旅句 エッセー集   掲載日 2016年5月15日
 

表紙


背・裏表紙

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本書の著者は、幌尻岳や礼文岳、石狩岳、二ペソツなどの山々に深田久弥と同行しており、我がクラブでは生前の深田久弥を知る数少ない会員である。また、「札幌山の会」設立会員であり、会長も歴任し、その人脈は広く、北海道の登山史には欠かせない人物である。

本書は、俳誌「道」に、毎月「山旅句」と題する随筆を13年以上にわたり寄稿した160回分と他誌に発表した「深田久弥と山岳俳句」、ご自身の山岳俳句をまとめたものである。「山旅句」は山旅の句集ではない。「山・旅・句」である。山や旅行に関するエッセーの他に、俳句に関するものを含み幅広く、題材は多岐にわたっている。

目次の項目から大雑把に紹介すると、「ヒマラヤの旅から」「20年ぶりのヒマラヤ」「ブータンの旅から」「カムチャッカ半島の山旅」「思い出の槍ヶ岳」「北アルプス剱岳に登る」「早池峯山の思い出」・・・定年を過ぎてなお果敢に国内外の山旅を楽しむ著者。「アイヌの歌 くじら祭り」「豊浦と白老のカムイチャン」「アイヌ古式舞踏 鶴の舞」・・・アイヌに関わって、「文学の鬼を志望す 八木義徳展」「深田久弥著『贋修道院』をめぐって」・・・深田久弥に関わってのエピソード。坂本直行、吉村昭、佐多稲子、藤田嗣治画・・・著者の人物評も興味深い。「山岳俳句について」「山の名の俳句」「深田久弥と山岳俳句」そして著者の俳句・・・石橋辰之助(旧号竹秋子)による山岳俳句の成り立ちの紹介から「山岳俳句」の奨めまで示唆に富んだ文章で綴られる。 特に「深田久弥と山岳俳句」は俳句に興味を持たない人も深田を知るうえで是非読んでほしい内容である。

  最後に、著者の句から気に入った二句選ばせてもらった。
        尾根伝う風に歪みし雪庇踏む
        サンピラー逝けるか友かと立ち尽くす
                                                (大久保博 記)

     2013年10月発行  北海道出版企画センター B6判 225頁 本体1800円+税