(図書紹介) 高澤光雄著
 

      
大雪山讃歌        掲載日 2016年5月15日
 

表紙

裏表紙

本の厚さ
 
彩色画三景

古き好き時代の絵葉書
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本書の著者は、幌尻岳や礼文岳、石狩岳、二ペソツなどの山々に深田久弥と同行しており、我がクラブでは生前の深田久弥 を知る数少ない会員である。また、「札幌山の会」設立会員であり、会長も歴任し、その人脈は広く、北海道の登山史には欠かせない人物 である。1932年(昭和7年)生まれ、傘寿を越えてなお意気軒昂。今なお山旅を続け深田久弥研究、絵画、俳句作りに余念がない。

本書は、『愉しき山旅』『山旅句』に続く、著者・高澤光雄の大雪山「讃歌」である。巻末の登山関係主要年表を参照すれば、 著者の北海道の山々に残した足跡が、「日高山脈神威岳未踏の南西尾根・冬期登頂」や「望月達夫氏や深田久弥氏、今西錦司氏らをガイド」 、「北海道の登山史探究」など幅広く豊かであるか理解できるだろう。

大雪山山系を訪れたのは87回、延べ日数は200日を越える。65年間にわたり綴った大雪山「讃歌」25編を収録する。 著者自身の写真や絵画を含め古き好き時代の絵はがき、100枚近い写真を挿入して、それぞれの時代の様子が分かりやすく見やすい。 (蝦夷地探検から文明開化の測量へ〜国立公園に指定〜北大スキー部と山岳部の活躍〜)

さらに、高校3年の昭和25年7月16日、仲間6人と大雪山を目指すが、途中で土砂降りとなり雨宿りになる場所が見あたらず、 川のコンクリート橋の下にテントを張った。川の増水で命からがらそこから脱出・・・なおも松山温泉の宿主さんや同宿した高校の先生ら に助けられて縦走は続行したが、台風接近による悪天候で道に迷うなど失敗続きでやっとの思いで層雲峡に下ることができたという。 「山の怖さを体験したことが、その後の登山に大いに役立った」という。そんな青春の1ページを臨場感あふれる文章で綴る。 (「我が青春の山・初めての大雪山」から要約)
著者の集大成で興味深いエピソードが満載である。(大久保博 記)

    2015年5月発行 北海道出版企画センター B6判 213頁  本体1600円+税